~~
日本初の鉄道が、新橋(汐留)―横浜(桜木町)間に開通してから150年の節目を迎えた。鉄道の歩みは、近代日本の歩みそのものである。先人たちの多大なる労苦に感謝の念を表したい。だが、「200年」への道のりは険しい。
鉄道100年を祝った昭和47年も国鉄が最後の光芒(こうぼう)を放った年だった。「ひかりは西へ」を合言葉に新幹線が岡山まで延伸し、在来線特急も高速化された一方で、国鉄解体へのカウントダウンが始まっていた。
前年、国鉄当局が推進していた「生産性向上運動」(マル生運動)が、社会、共産両党の支援を受けた国労や動労による激しい反対闘争と朝日新聞などの「反マル生」報道によって挫折した。
職場は荒廃し、48年には組合のサボタージュ闘争に怒った乗客が暴動を起こすなど、末期的症状を示し、62年の国鉄分割民営化につながった。
35年を経て民営化はおおむね成功したといえるが、ひずみも顕在化してきた。コロナ禍による乗客激減こそ峠を越えたが、少子高齢化と過疎化、それに高速道路の整備というトリプルパンチが、各社の経営を圧迫している。
JR東、西日本両社は赤字が拡大しているローカル線の維持に悲鳴を上げている。JR北海道では発足当初、約3200キロあった路線は既に約600キロが廃止され、新幹線の札幌延伸時に函館本線の一部廃止が決まるなど、縮小が加速している。
JR東海も社運を賭けたリニア新幹線が、静岡県知事の反対で開業のメドすらたっていない。
いずれも一民間企業には手に余る問題だ。欧州では、二酸化炭素排出量が自動車や航空機に比べて格段に少ない鉄道が再評価され、国が多額の補助金を出している。特にリニア新幹線建設は、成長戦略の一つとして国が積極的に関与すべきである。ローカル線の存廃問題も安直にバスへ転換するのではなく、地方の交通はどうあるべきかというグランドデザインを国が明確に示さねばならない。
JR各社は鉄道150年を機になぜ国鉄が解体の憂き目を見たかを振り返り、不断の改革を進めてほしい。分割民営化後、東京―九州間の夜行列車が全廃されたように、各社間の協力も円滑とは言い難い。むろん、安全輸送が最優先であることは言うまでもない。
◇
2022年10月14日付産経新聞【主張】を転載しています